自動車の診断システムとして重要な役割を果たしているOBD(オンボードダイアグノスティクス)には、初期のバージョンであるOBDと、より進化したOBD2があります。
両者は似たような目的で使用されますが、機能や適用範囲に大きな違いがあります。
この記事では、OBDとOBD2の違いについて詳しく解説し、メモリーセーバーを使用したメモリーバックアップについても紹介していきますので、その関係性についての理解が深まることでしょう。
OBDとは?
OBD(オンボードダイアグノスティクス)は、車両のエンジンや排出ガスシステムを監視するために開発された初期の診断システムです。
1980年代後半に導入され、車両のコンピュータシステムを使って排出ガスを監視し、問題が発生した際に警告灯を点灯させる役割を果たしていました。
OBDの特徴
- 基本的な機能:エンジンや排気ガスの問題を監視し、問題が発生した際にエラーコードを生成する。
- 限定された規制:初期のOBDシステムは主に排出ガスに関する問題を監視していたが、車両メーカーごとにシステムや規格が異なるため、統一性が欠けていた。
- 対応車種:1980年代から1990年代初頭の一部の車両に搭載されていたが、車両ごとに異なるプロトコルや診断手順が必要だった。
OBD2とは?
OBD2(オンボードダイアグノスティクス第2世代)は、1996年以降、アメリカをはじめとする多くの国で新車に義務付けられた診断システムです。
OBD2はOBDの進化版であり、排出ガスだけでなく、車両全体の多くの電子システムや機械部品を監視する機能が強化されています。
また、車両メーカーにかかわらず統一された規格が採用され、整備士や車検担当者がより効率的に問題を診断できるようになっています。
OBD2の特徴
- 高度な監視機能:エンジンや排出ガスシステムだけでなく、トランスミッション、燃料システム、エアバッグ、ABS、その他の電子制御システムも監視できる。
- 統一された規格:車両メーカーを問わず、統一された診断プロトコルを使用しており、どの車でも同じ機器で診断が可能。
- より多くの情報提供:OBD2では、単なるエラーコードの生成にとどまらず、エンジンのパフォーマンスや排出ガスのリアルタイムデータを提供することができ、より詳細な情報を取得可能。
- 対応車種:1996年以降に製造されたほとんどの車両に搭載されている。
OBDとOBD2の主な違い
1. 対応する監視範囲の違い
- OBD:主にエンジンや排出ガスシステムに関する問題を監視するだけで、その他の車両の電子システムには対応していませんでした。
- OBD2:排出ガスだけでなく、エンジン全体、トランスミッション、燃料システム、ABS、エアバッグなど、車両の複数の電子システムを監視することができます。
2. 規格の統一性
- OBD:車両メーカーごとに異なるプロトコルが使用されており、整備士は車種ごとに異なる診断機器や手法が必要でした。
- OBD2:全世界で統一された規格が採用されており、どの車両でも同じ診断機器を使用することが可能です。この統一性により、診断が容易になり、整備の効率が向上しました。
3. データの詳細度
- OBD:基本的なエラーコードだけを提供し、エンジンや排出ガスに関する問題が発生したかどうかを示すのみでした。
- OBD2:より詳細なデータを提供し、リアルタイムのエンジンパフォーマンスや燃費データ、その他の車両システムの状態をモニタリング可能。
4. 対応する車両の範囲
- OBD:1980年代後半から1990年代初頭の車両に適用されていましたが、統一された義務化はありませんでした。
- OBD2:1996年以降のほとんどの新車に搭載されており、義務化されています。特に、排出ガス規制の厳格化に伴い、OBD2システムは多くの国で必須となっています。
- OBD診断の義務化:日本では2021年10月1日よりプレテスト2024年より本格導入となりOBD検査対象車についてはOBD診断が義務化されました。
- OBD検査料:検査時には「技術情報管理手数料」として一律400円が、新たなユーザーの負担となります。
OBD2のメリットと車検への影響
1. 車検時のOBD2チェック
OBD2は、車検時に車両の電子システムや排出ガスの状態を診断するための標準的なツールとして使用されています。
特に、日本や欧米ではOBD2システムのエラーコードが車検基準に影響を与えるため、エンジンのチェックランプが点灯している場合は車検を通過できないケースもあり。
【EPARK車検】OBD診断が義務化となった2024年以降は、車検検査時に「技術情報管理手数料」として一律400円が発生。
2. 環境性能の向上
OBD2は、排出ガスシステムをより効果的に監視することで、環境に優しい車両を維持するための役割も担っています。
エラーが検出された場合、修理が必要であり、それが排出ガス規制の遵守に直接結びついています。
メモリー保護を目的としたバッテリー交換の重要性
バッテリー交換時にOBDのメモリーを保護することは、車両の電子システムを正常に維持し、再設定の手間を省くために重要。
特に、最近の車両は電子制御が高度に統合されているため、設定がリセットされると再度調整するのに時間とコストがかかることがあります。
メモリーがリセットされることのリスク
- エラー診断が困難に
バッテリー交換によってエラーコードがリセットされると、診断が難しくなり、潜在的な問題の発見が遅れることがあります。特に、車検前にエラーコードを消去してしまうと、車検時に不具合が見つかって再整備が必要になる場合もあります。 - システムの再設定が必要になる
ナビゲーションシステムやラジオのプリセット、エアコンの設定などがリセットされ、再度設定し直す必要が出てきます。これが面倒なだけでなく、場合によっては車両のパフォーマンスに悪影響を及ぼすこともあります(例:エンジンやトランスミッションの学習データが失われる)。
OBD2メモリーセーバー
バッテリー交換時にメモリー保護つまりバックアップを確実に行うためには、OBD2メモリーセーバーというツールを使用します。
スペアバッテリーをお持ちの場合はこちら
これは、バッテリー交換中にOBDシステムや車両の電子システムに電力を供給し続けることで、メモリーを保護し、設定がリセットされるのを防ぐためのデバイスです。
OBD2メモリーセーバーの使用手順
- 車両のOBDポートに接続
まず、車両のOBDポート(通常、ダッシュボードの下にあります)にOBD2メモリーセーバーを接続します。 - 外部電源を接続
メモリーセーバーは通常、外部電源が必要で予備バッテリーから電力を供給します。電池式のタイプもあり個人ではこちらのタイプがおススメ!これにより、車両の電子システムに電力を供給し続けます。 - バッテリー交換を実施
メモリーセーバーが接続された状態で、古いバッテリーを取り外し、新しいバッテリーを取り付けます。この間、車両の電子システムは電力を失わないため、メモリーはリセットされません。 - メモリーセーバーを取り外す
新しいバッテリーが正常に取り付けられたら、メモリーセーバーを取り外して作業完了です。
メモリー保護のメリット
1. 再設定の手間を省く
バッテリー交換後、ナビゲーションシステムや時計、エアコンの設定などがリセットされると、再度設定し直す必要があります。メモリーセーバーを使うことで、これらの手間を省くことができます。
2. 車両のパフォーマンスを維持
エンジンやトランスミッションの学習データがリセットされると、車両のパフォーマンスに一時的な影響が出ることがあります。メモリーを保護することで、これを防ぎ、交換後もスムーズな運転が可能です。
3. 診断作業をスムーズに
エラーコードや整備記録が保持されるため、今後の診断作業がスムーズに進みます。これにより、次の車検時にも無駄なトラブルを避けることができます。
まとめ
OBDとOBD2は、車両の診断において重要な役割を果たしますが、OBD2はその機能を大幅に拡張し、車両全体の電子システムを監視できるようになっています。
特に、OBD診断は義務化されたこともあり、車検時の診断や排出ガス規制に対する対応力が強化されたことから、今後の自動車メンテナンスにおいて不可欠なシステム。
個人においても、バッテリー交換や車両の整備を行う際には、OBD2システムが正常に機能しているかを確認し、適切なメモリー保護を行うことで、車両のパフォーマンスや診断の正確性を維持することが重要。
それにはOBD2メモリーセーバーが必須。
9V電池で使用可なメモリーセーバーもあります。
(もちろん12Vバッテリーにも接続可能)
スペアバッテリーが無い場合はこちら
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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